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地主制度2.0追記の1 WEB2.0というゲームには隠しルールがあって、それが隠蔽されたまま進行している

先日の地主制度2.0の話、一晩考えて色々追記を書こうとしたら、既に考えてたことが、かなりハテブやトラバで論じられてて書くことがあまりない感じ。

ただ、エントリがグーグル=悪みたいな文脈で認識されてるけど、それはちょっと違う感じデス。

僕はGoogleを悪だとは思っていないし、地主制度も、支配階級も、搾取構造も全然否定しない。というか組織であれ個人であれ、能力と手札とチャンスが均等でない限り、上から下に連なる不平等のレイアウトが生まれるのは、当たり前だと思っている。むしろ、能力と手札とチャンスがマチマチなのに、結果が平等な世界のほうが歪だと思う。ついでに言うならば、自分を駒として見た場合、たぶん僕は盤面が荒れば荒れるほど有利になるタイプのプレイヤーだ。だからGoogleやAmazonが既存勢力を破壊するのは大歓迎な側にいる。

で、僕が気持ち悪いと思ってるのは、WEB2.0というのが下から上に吸い上げられる強烈な搾取構造を根底に持っていながらも、「これこそ僕らが待っていたインターネットのあるべき姿!!」といった、あたかもユートピア思想的な文脈で語られている、その齟齬だ。

胴元かそこ近い場所から発表されたゲームのルールが、実際のゲーム進行とはまったく違っている感じが超キモイ。


で、隠蔽されてるルールが何かというと、「吸い上げられているのは金銭だけではない」ということだと。従来の搾取構造では政府であれ、インテルであれ、マイクロソフトであれ徴収の対象となっているのは基本的に金銭だった。そして徴収した金銭を投資して新技術を開発し、支配力を強める為のイノベーションを作り出す、というのが従来の構図だと思う。

一方で、WEB2.0というゲームでは「ついでにデータも徴収しますよ」といルールが小さい文字でこっそり追加されている。

今までだったらば、徴収した金銭を使って購入していたもの、しかも莫大なお金がかかる上に、正確に収集できるとは限らなかった貴重な資産が、無料でしかも100%生データが、凄い勢いで吸い上げられている。これって物凄いことだと思うのだけど、不思議とみんなツッコミを入れない。

冷静に考えてみれば、もしも旧来のエスタブリッシュメント層が100%の生データを収集していたら―例えばインテルがCPU上のデータの流れをトラックしたり、マイクロソフトがメモリ上の全てのデータを解析したら…―確実に物凄い大騒動がおこる。不買運動程度じゃすまない事件になるだろう。

ところが、WEB2.0という文脈の中では、Amazonがどこの誰がどういう文脈で何をいつ誰のためにどのサイトで購入したかを粛々と記録しても、Googleがユーザーにユニーククッキー割り振って、全検索履歴をトラックしていたって、何の疑問もいだかれない。それがディフォルトになっている。もちろん、そこの部分を気にしている人もいるのだけど、世間一般的な風潮として誰が何を言っても「心配性の識者」とか、「またプライバシー保護団体が騒いでるよ、テラワロス」程度の反応で済んでしまってる。というか、そういう行為が許されるようになったことが最大のパラダイムのシフトのはずなのに、そこが完全にスルーされいる。

このデータ収集の構造やら、データの持つ意味の変化っていうのが、WEB2.0という環境が持つ最も大きな特性だろう。しかし、そのゲームの特性や新ルールが何をもたらすかを置いてけぼりにして、マッシュアップだとか表装の部分だけがフィーチャーされているように思える。で、そのユートピアンなWEB2.0が喧伝される裏で、このゲーム主要プレイヤー達は、全然別のプレイスタイルでこのゲームの展開を行っているのではないかと。

例えば、膨大な量の検索生データを、ユーザー情報とつきあわせて解析すれば、「過去にココとココを閲覧していて、〇〇という検索キーワードを入力しているユーザーは90%の確率で、年齢〇〇、職業〇〇、性別〇〇」といったプロファイリング技術を開発することが可能となる。これは単純に金や才能では、絶対に開発することのできないイノベーションだ。おそらく既にGoogleの内部とかには全データを片っ端からニューラルネットにブチコンでなにやら学習させているプロジェクトとかが存在するのではないだろうか?

んで、こういう立ち位置からWEB2.0のキーワードを俯瞰すると、まったく違った構図が現れる。

「フォークソノミー」「ユーザを共同開発者として信頼する」「集合的知性の活用」「顧客によるセルフ・サービスを通じて、ロングテールを活用する」、「モニターの向こうの不特定多数」

こういった諸々の概念が組み合わさって示唆されるのは、膨大な不特定多数の群集が好き勝手に行う行動の記録が、そのまま燃料となって駆動する強大なイノベーションエンジンの可能性だ。この巨大なイノベーションエンジン(とその燃料)の争奪戦こそが、WEB2.0というゲームの裏側なんじゃあないだろうか。

そういうわけで、Googleがキモイとか、搾取構造が悪いとかいうのではなくて、核心が隠蔽されたまま進行される不自然なゲーム展開がキモイ。活気溢れる人間の世界が実はまったく異なった理で動いていて、蓋を開けたら人間は全部(イノベーションエンジンの為の)電池にすぎませんでした、というまんまマトリックス第一部的な構造があるように思える。

もちろんマトリックスな世界自体はそこまで悪いわけではなくて、この世界がマトリックスであるということに気付けば、きっとスーパージャンプしたり弾丸を避けたり、色々楽しいライフが待っている。ミクロ的に見ればシステムを欺いて、自分の王国を作ったりするのも全然アリだと思う。

だから個人的にはウェブサービスをハックするよりも、もっとメタな視点でWEB2.0という支配構造自体をハックする遊びのほうが面白いんじゃあないかと思ってる。で、結局このゲームをどうやってハックしてやろうか、という話なんだけど、なんかWEB2.0キモスという愚痴にしては長くなりすぎたので、続く。